レーザー白内障手術を再考
レーザー白内障手術を開始してから…7年。おかげ様で、約500眼以上のレーザー白内障手術を担当させて頂いた…感慨深い。今思えば…導入当初に先進医療によるレーザー白内障手術がその範疇に入ったのが大きく、多くの貴重な経験をクリニック、そして私に享受してくれた。使用レンズの内訳は、割愛するとしても、かなりの数のレーザー白内障手術を経験させて頂いたと思う。2016年秋に…世界最先端の医療を下之城にの熱い思いと清水の舞台から飛び降りるつもりで…導入しラーニングカーブを経て…そろそろ自分になりに総括しても良い頃だと思った。
当院では毎火曜日、保険診療でのマニュアル手術を行なっている。多くの患者様に喜ばれ…開院以来一定のクオリティー以上のものはお届けしている自負はある。レーザー白内障装置を導入して…同時にベリオンと呼ばれる術中ガイダンス装置をマニュアル手術時にも積極的に使用するようになった事。今では当たり前だが…見え方の質(QOV)にこだわり、ガイダンス下で当初から積極的に乱視矯正レンズを多用してきたのも大きな要因かと思う。そのような貴重な経験は…日々私に、そしてクリニックにアップデートされパンプアップし続けている。では…保険診療内だけの医療レベルで充分?確かに…レベルは高い。
それでも…なおレーザー白内障手術で、全例の白内障手術が行えればと個人的には思う。導入直後から、日々その思いは強くなっている。それは何故か???
自問自答してみる。
レーザー白内障にも欠点は…ある。未だに解決されない単一のPIサイズ(アメリカンサイズ)。高額な購入費用。そして…永続する高額な保守点検料や維持費。保険診療に載せられるものでは決して無い。今の日本では、自費診療でしか生き残る道はなく、クリニックの裁量次第。全国的にも下火になってきているのが事実。医療側と患者様にとっても金銭的な問題が大きいんだ…と思う。
当院では、偶数週の金曜午後にレーザー白内障手術を行なっている。専属オペナースの存在や共に経験を積んできた頼れる相棒(ORT)と人員を厚く配置し、プライドを持ってより普遍的で安全性が高く、より高クオリティーなレーザー白内障手術を提供し続けている。レーザー白内障手術を選択され、オプションでの多焦点IOLを選択する患者様も多く見受けられる。レンズの進歩も目覚ましい。価値観は千差万別たがら…私個人としては、レーザー白内障手術や多焦点の存在を知った上で、ご自分の判断で取捨選択して保険のマニュアル手術を選択されるのであれば、何も問題はないと思っている。要は…こういった医療を自由に選択が出来る時代だと知って欲しい。
私が注目するレーザー白内障手術の一番の秀逸さは、水晶体前面(前嚢)に描かれるその正円。たった数秒だか…視軸中心に、または瞳孔中心に0.1ミリ単位で拡大、縮小出来る技術は、到底人知の及びえる領域では無い。オートメーション化されていて人や術者による差は皆無。白内障手術を担当している術者なら、この意味や凄さが分かるはずだ。その正円を通して水晶体嚢の中にレンズが収まる。ど真ん中に収まる。当院では、レーザー白内障手術希望者には、全例でオラシステムも活用し、度数ズレのリスクを回避し、かつCTR(カプセル補強材)を挿入している。自費だから出来るサービスなのだが…。物理的に考えても…正円であればのちのち前嚢収縮を起こした場合でも、その力のベクトルは円の中心に均等に向かいレンズはズレにくいはずだと考える。
白内障手術のいわゆる難症例や手術後のトラブル(核落下やIOL偏位、強膜内固定など)にも、多数経験をさせて頂く立場から…もし初回の手術をレーザー白内障手術で施行していれば、結果は違っていたのかもしれないと思う時は…ある。私は、私の経験値からレーザー白内障手術を初回からお薦めさせて頂いた患者様もいる。数年前に思い描いた難症例こそ、レーザー白内障手術が向いているとの思いは今も変わらない。痴呆や、手術時期を大きく逸脱した白内障や95歳以上の昔は手術適応を疑うような方々が、レーザー白内障手術の恩恵を受けた現実を体験し、より年月を重ね、経験を積んだ今、医師として、金銭的な問題が解決出来るのなら…全ての白内障手術にレーザー白内障手術がベストな選択だと思う。その技術は折り紙つき。精度の高い術前検査機器から術中ガイダンスシステム、オラなどアシスト機械とも上手く共存して…患者様に普遍的でより質の高い手術を提供し続けられるのがレーザー手術なんだと思う。
人は経験を得る代わりに歳をとる。この頃、本当に実感する。術者として、いつまでそのクオリティーを維持出来るのだろうか?と考える。器械はメンテナンスし続けなければ故障する。さて…この莫大な精密機器達のメンテナンス料を私は…院長として、これからも捻出していく才を求められるのだろう。そして、自分が…大切な人達が、白内障手術を受けるのなら、迷わずレーザーで…その思いは今後も変わることは無いんだろうと思う。